百万石音頭(金沢市)          作詞:丘灯至夫 作曲:古関裕而

1 お城とろうか百万石の 男度胸のエー鏡山

 (加賀のやぐらでドンとなる太鼓 広い天下でドンと響く ナーソーレ百万石のドンとねドンとね)

2 昔想えば犬千代公(きみ)の 眉によく似た流れ星

 (加賀のやぐらでドンとなる太鼓 広い天下でドンと響く ナーソーレ百万石のドンとねドンとね)

3 トンボ散らしの友禅染めて 加賀の千代女の夢を見た

 (加賀のやぐらでドンとなる太鼓 広い天下でドンと響く ナーソーレ百万石のドンとねドンとね)

4 沖は荒海 潮鳴り聞けば 銭屋五兵衛の声がする

  (加賀のやぐらでドンとなる太鼓 広い天下でドンと響く ナーソーレ百万石のドンとねドンとね)

3 桜見るなら 兼六園で たあた土産(みやげ)に 加賀の絹          *たあたは娘のこと

(加賀のやぐらでドンとなる太鼓 広い天下でドンと響く ナーソーレ百万石のドンとねドンとね)

◆金沢には、加賀百万石の城下町として今もその歴史と文化の香りが街角の片隅に漂わせている。この町の基礎を気付いたのが天正11年、金沢城入場の前田利家公に始まる。終戦後の昭和27年から始まった「百万石まつり」は、毎年6月14日を中心にこの金沢城入場の再現する華麗・豪華な時代絵巻の「百万石行列」を初め、勇壮な加賀鳶火消しの心意気見せる加賀鳶行列など多彩な催しがが全市的繰り広げている。昭和29年このまつりを盛り上げようと「百万石音頭」が創作され、中央公園(現「いしかわ四高記念公園」に盆踊りが加えられた。この唄は、前田利家公と百万石の雄大さが表現された踊り唄である。今日まで、金沢の盆踊りとして最も親しまれ、金沢百万石まつりはもちろん、8月のお盆時期になると、金沢の各地区盆踊りでは、必ず踊られた盆踊りである。百万石の雄大さとその響きは、格調高い民謡である。

◆この唄は、作詞 丘 灯至(としお)作曲 古関祐而(ゆうじ)である。丘氏は福島県であの有名な「高校三年生」を作曲、古関氏も福島県で全国高校野球選手権の大会歌「栄光は君に輝く」など数々の応援歌を残している。昭和29年コロンビアレコードが全国の盆踊り用レコードとして46枚一挙に発売、昭和31年、金沢駅落成祝賀行事「市民おどり大会」に踊ったのが初めてだという。その後百万石まつり「踊りの夕べ」(県中央公園)でこの「百万石音頭」が盆踊り(輪踊り)形式で昭和63年まで続けられた。

◆平成元年から毎年6月第一週末には、金沢市内メーンストリートで金沢百万石まつりが多彩に挙行されるが、土曜日の夜は1万人を超える「百万石踊り流し」で賑わっている。この曲はそこで歌い・踊られる1曲でもある。

◆*百万石音頭の踊りは、昭和29年、コロンビアレコードが発売した「百万石音頭」のレコードに「踊り方」のイラスト付き、それを金沢市の婦人団体が取り組んだのが始まりで、その踊りが現在、地域の盆踊りや金沢百万石まつり「百万石踊り流し」で踊られている手踊りが一般の踊りである。
*平成17年7月、JTBの「杜の賑わいインいしかわ百万石夢絵巻」の公演(石川厚生年金会館・現本多の森ホール)の開催を機に、この「百万石音頭」曲の雄大さとその響きをJTBが委託した「鷹の羽エンターティメント」が現代風にアレンジし、踊りはこの催しに出演した北都民謡会・民舞北川会・兼六民謡会・孝藤まりこ社中の合作で伝統工芸の「金箔」と雅を金銀のセンスで表現した振り付けにし、オープニング曲・フィーナーレ曲が登場させた。これがニューバージョン「百万石音頭」(曲は「新百万石音頭」ともいう)、現代風の「百万石音頭」として金沢市民謡協会に帰属し、平成18年、金沢百万石まつり「百万石行列」が金沢駅東もてなしドーム鼓門前から出発することに見直され、出発式にふさわしく若干の編曲も行い、大勢の石川県太鼓連の和太鼓の伴奏とともに編成、ここに150名でこの踊りが登場したのである。
*金沢百万石まつりの開催中、恒例のまつり特別協賛・金沢市民謡協会主管「民謡華絵巻」(会場:金沢歌劇座)が開催。そのオープニングやフィナーレに百万石音頭の総踊りなどを盛大に上演、平成25年から協会で金銀のセンス踊りの舞台踊りに振り付けして登場させました。この踊りを通称「舞台踊りバージョン」といっている。、

一題目の歌詞に「お城とろうか百万石の 男度胸 エエエ 鏡山」とあるが、この歌詞は、享保9年(1724)石見(いわみ)国(島根県)浜田藩江戸屋敷で起こった女仇討ちの「鏡山事件」と寛延元年(1748)天下(百万石のお城)を乗っ取ろうとしたという加賀藩主江戸屋敷で起こった加賀騒動、この二つを絡めて創作された歌舞伎の演目「加賀見山旧錦絵」(かがみやまこきょうのにしきえ)もしくは「鏡山旧錦絵」を歌っているようである。この演目の歌舞伎は現在でも人気演目として東京・歌舞伎座などで上演されている。

加賀騒動は、茶坊主から加賀藩の重鎮に上がった大槻伝蔵が保守派との確執、それから藩主毒殺未遂事件まで発展するのである。

鏡山事件に悲劇の主人公みちは、心優しく、良く働き、奥方様からも寵愛(ちょうあい)され、奥女中達からも慕われていた淑女であったが、些細なことから局からとがめられ、それが原因で自害する。そして仇討ち事件が発生することになる。浜田藩主は松山(標高69m)という小高い山にみちの墓を建てて弔い、後世淑女の鏡としてこの山を「鏡山」と改めたのである。

これらの物語が、歌舞伎で登場し、(いき)に大見得を切る、「男の心意気」が伝わってくる。と考察される。(2012/6/2)

 

 
2017/6金沢駅東もてなしドーム前 出発式バージョン「百万石音頭」の演舞
                              


 
2017/6金沢駅東もてなしドーム前 出発式バージョン「百万石音頭」の演舞